進んでくると、研ぎ澄まされる感性と本能。
非常事態宣言が解除されたけれども、
私たちの生活はかわってしまった。
普段の活動がすべてできなくなり、家にいる機会が増え、
パパの状態は進んでしまった。
この2か月を過ごして痛感したことは、
とにかく、日々当たり前に行っていたトレーニングやリハビリなどだ
どれほどコンディションを維持するために大事であったかということ。
素人の私たち家族だけでは、やはり足りない。
脳細胞が減ってしまった分、既存の細胞がフル活動する。
常に神経を立てている状態ですごしているので、
自然に感性というか、本能が研ぎ澄まされる。
小さい音にも敏感になる。
数か月どころか、数日で、コンディションが変わってしまう。
一秒たりともママが近くから離れると、
「かあさんはどこいっちゃった?」
と探す。
ママは、24時間監視されているように感じるみたいで、
ヘルペスが治らなくなってしまった。
家で一緒にいるのに、限界が近づいてきているような感じ。
一日一日がすごく長くて、
そしてものすごく切ない。
いろいろありました。コロナに負けるな。
2月8日が最後の投稿になっていました。
もう2か月以上たっていたんですね。コロナの蔓延、ロックダウン、いろいろなことが起こっていますが、私にとっても大きな事件がありました。
2月9日におばあちゃまが倒れました。
骨折。
大腿骨の骨折だったので緊急手術。
10日の深夜11時半から全身麻酔で午前3時半まで。
付き添えるのが私しかいなかったから、いろいろな同意書にサインをしたり
お医者様の話を聞いたり、本当に緊張する時間でした。
骨折なのに、場所が場所であること、全身麻酔をすることでいろいろなリスクがあることなど、説明を受ければ受けるほど、単なる骨折ということではありませんでした。
そして手術は無事に終わったのに、次の日の夜中心停止。
先週まで元気だったのに、骨折が原因で心停止?!
私にはコロナどころでななくなってしまいました。
心停止はしたけれど、一命は取り留めました。
そこから3日間、脳への損傷を最小限にするため、意図的に意識を混濁させ
体温を一定の状態を保つという体温管理治療。
ICUで24時間の管理体制下で。
体中が管につながれ、トレーディングデスク並みのモニターに囲まれ、
私はどうしてこんなことになってしまったのか、しばらく本当に呆然としてしまいました。
それから2か月、まだ病院でおばあちゃまは頑張っている。
すべて決めるのはママ。
最近パパは、「うちに帰る」と言わなくなった。
つい3週間くらい前は、「ここがうちなのよ」とママが言っても、
絶対に違うといってかなり荒れていた。
原因は、リビングから見える景色が激変してしまったから。
以前は、森のようにたくさん木が見えていたのに、台風で折れてしまったので
全部切られてしまった。
パパの症状は、このことを発端に一気に進んでしまった。
見える景色があまりにも変わってしまい(とはいっても、とても見晴らしはいいのだけど)、自分のうちと認識できなくなってしまったの。
それでも、根気強くママと私と「ここがうちよ」と言い続けていたら、
納得してくれるようになった。
もちろん本当に納得しているわけではないと思うけど。
ずっと言い続けていると、ちゃんと脳に記憶として定着する。
認知症であっても、脳は機能しているのだ。
パパのことに関しては、一切の決断をママがする。
私はどこまでも、ママのサポート。
パパの介護認定を取るとか、いろんなことがたくさんあるのだけど、
私は情報を提供するだけ。
そこからどうしていくかを決定するのはママ。
パパが認知症になってしまったのは、すごく残念だけど、
そんなことは言っていられないほど日常は現実。
日々刻々と状況は変わる。進んだかな、と思うことも、
改善してるかも!と思うことも。
私がもっとできることもあるかもしれないけど、これはパパとママの物語の最終章。
私は立ち入ってはいけないのだと思う。
だからどんなこともパパに関してのことを決めるのはママ。
■
昨日は、初めて介護保険を使って、トレーナーの人が来てくれた。
若いトレーナーの人で、とても上手にパパと付き合ってくれたらしく、
パパは終わって「楽しかった!」と言っていたとのこと。
私の相談に乗ってくれている、ケアマネさんから
「新しいことをはじめるのは大変なことなんですよ。本当に良かったですね。
お父様を励まして差し上げてください」と言われたので、さっそく夜はご飯を一緒に食べようと思って実家へ向かった。
私はいつもと違い仕事から直行したのだけど、パパの様子が何となくおかしい。
私がまとった仕事のオーラを感じるらしく、それを好ましく思わないよう。
「お前は台所へ行って手伝え」とか、「偉そうにするな」と突っかかってくる。
パパは、残念だけど、娘が社会人として力を付けるとか伸びていくことを受け入れられない。典型的な男尊女卑な人だ。
ここだけは、とても残念に思う。私は自分なりにベストを尽くして頑張ってきてことに、理解もなければ、喜んでくれることもない。
私のことについては、興味がない、といったところ。しょうがないね。
認知症になりやすい性格ってもしかしたらあるのかしら。
見当識障害があるので、私のことがわかるときもあるし、わからないときもある。
パパは、正気の自分が壊れていく自分をわかっているという状況。これは本当につらいと思う。
パパは大変だと思うけど、とにかく命ある限り、学べることがあるはずだから、それを全うしてくれるのを見届けようと思う。
それが私のできることで、私がパパから学べること。
パパ、応援してるからね。
インフルエンザで寝込みました
お正月からの疲れがたまったのか、39℃の熱が2日半出ました。
土日を挟んでしまったので、病院に行かず、
出るだけ熱を出して、自分の力でウィルスと戦いました。
熱が引いて、背中が痛いのは残ったけれども、体はすっきり。
私の主治医美人の宇宙人先生も、「がん細胞も熱に弱いですから!私も解熱剤を飲まずに、熱出して治します。患者さんには進めませんけど笑」
と宇宙人発言をしていました。
好きだな~、宇宙人先生。
認知症の第一人者が認知症になった(NHKスペシャル)
長谷川メソッドを提唱した認知症の第一人者長谷川先生のことを一年間追った番組。
パパがどんなことを思っているのか、何がしてもらいたいのか、心の中を知れたら。
認知症の人の心の中を理解するためのヒントがたくさんありました。
自分がどこにいるのか、いつなのか、わからない、はっきりしないことがあり、すべてが不安になってしまう。
何度も何度も同じことを聞いていると、周りが迷惑がるから、言っていいのか、言ってはいけないのか、不確かになり寡黙にならざるを得ないのだそう。
壊れていきつつあることが、感覚で分かっている。
生きているうえでの「確かさ」というのが薄くなってしまうのだとか。
さぞかし不安だろうな。
長谷川先生の日記の下りに、その解決策が記されていました。
『言葉を交わすこと。』
「僕の体や精神、心のすべてに瑞子がいてれる。こんな感覚は初めてだ。いつも瑞子と共にいる感じだ。幸せだと思う。
朝起きると、今日は何をするのかな、俺はどこにいるのかな、自分の在り方がはっきりしない。
彼女が言葉を交わしてくれる。
「おはよう。調子はどう?よく練れた?」とお互いに声を掛けあっていると、大丈夫なんだなと思って、不安が薄れていって、確かさが戻ってくる。」
パパは最近になって「俺はかあさんがいて、幸せだ」と言っているのを何度か聞いたことがある。ほんとかな~と思ったけど、本当なのかもね。
声掛けることは、認知症の人の不安を取り除くのにとても大切なんだなと、長谷川先生の生の声でよくわかりました。
「毎日一つ一つのことに笑っていくことが大切だと思います。」
「認知症になっても、見えている景色はかわらない」
そう、パパの見えている景色は、認知症だからと言って変わっているとは私も思わない。
パパは赤い花を見れば、きれいだときれいだと言って愛でている。
漠然とわからなくなっていく不安はあると思う。
それでも、その中で、一緒の時間を過ごして、話をして、
不安が薄くなっていくことがあるならば、それは
素晴らしい事なんじゃないかしら。
パパは最近弱音を吐くようになった。
前は絶対に言わなかったのに。
もしかしたら、もっとパパが楽になるチャンスかも。
病気が進行したのではなく、周りの対処次第だった。
今日の夜のパパはすごく荒れた。
理由は簡単。ゴルフへ行ったから。
7時半に起きて、着替えて、ゴルフ場へ行き、ロッカーで着替えて、コースへ出る準備をして、ボールと手袋を準備して、自分が行くべきコースへ行き、・・・と、普通に健康ならばなんてことはない事も、パパにとっては永遠に続く作業に感じるでしょう。
4時過ぎに帰ってきた時点では、通常の日よりもより多くの情報をパパの頭は処理しているので、すでにオーバーヒート状態になっていることは簡単に予測がつく。
食事前には、ママのことが誰かわからなくなっていた。そしていつもより興奮していた。
状況だけ見たら、また認知症が進んだ、と考えてしまう。けれど、私は昨日からの活動を考慮すると、この2日間パパは必要以上に脳を酷使したから、混乱してしまった、それだけのような気がする。
対処法は、一日活動する日があったら、次の日は、脳が休息できる日に。
例えば、何か予定があるとしても、毎週決まっていて、自動的に何をするかわかること。
今日興奮しているのは、昨日もママと新しいところにランチに行き、今日は朝からゴルフ、という予定の詰め込みすぎが原因。
少しずつ脳細胞が少なくなるのであれば、残っている脳細胞が気持ちよく使えるような予定を組むことが大事なのね。
よくよく観察していると、面白いように、起こること、怒っている理由がわかるようになる。
夏くらいまでは、いつ爆発するかわからないから、私もおどおどしたりしていたけれど、今は理由がわかるようになったから、パパに対してもあまり感情的にならない。
Don't take it personal.
Take it easy.
パパ、案外楽に過ごせるようになるかもね。